アナログ・デジタル変換

彼は自分の趣味は「アナログ・デジタル変換」だと、我が家の沢山のVHSテープをDVDに変換してくれました。その多くは娘達が子供の頃に妻と買ったディズニーのアニメなど、100本くらいあったかな。再生機もなく、そのままにしていたものでした。

 

彼とは約15年前に出向していた子会社で苦楽を共にして以来の仲、妻が亡くなる前や亡くなってからもほぼ毎月一度我が家に娘達や私を気にかけて来てくれていました。お酒を飲んで語らった後、彼は沢山のVHSテープを持って帰り、DVDにして持って来てくれました。妻が生きていた頃に始まり妻が亡くなってからもこの作業を彼は続けてくれました。

 

そんな中に新婚時代にツアーで行ったシンガポール旅行で旅行会社から記念にもらったVHSテープが紛れ込んでしまいました。彼は我が家に来ると変換したDVDと一緒に「これは捨てないほうが良いよ」とVHSテープを返してくれました。その中にはシンガポールの観光案内、当時のシンガポール各地の映像とともに参加した若い妻と私を含むツアー客の様子も動画で記録されていました。

 

そんな映像があったこともすっかり忘れていましたので、DVDを再生した時には驚き、込み上げる感情に動揺しつつも改めて彼の優しさに感謝しました。

 

今はご両親の介護サポートのため、週末に我が家に来る事が難しくなってしまった彼ですが、また落ち着いたら、盃を交わし、語らいましょうね。

妻も待っていると思うよ。

 

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パパ、飲める日だね

3年くらい前から我が家は休日前しか飲まない事にしました。会社で直接業務に従事する人たちに一斉に業務前のアルコール検査が義務付けられた事がきっかけでした。

 

それまでは妻と夕食時にビールやワインを飲むのが日課でした。学生時代には殆ど飲めなかった妻ですが、ゆっくりとしたペースで、私よりも飲む時間を楽しむタイプに。素面の時から陽気なので、お酒を飲んでもあまり変わらず、一緒に飲む時間は楽しかったです。

 

毎週金曜日になると朝から二人の合言葉は「ママ、今日は飲める日だね」そう声をかけるとにっこりした笑顔が思い出されます。今日は金曜日、一人でゆっくり飲んでるよ。声が聞きたいなぁ。

 

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愛犬アンジュ

2011年5月に我が家は一匹のミックス犬を購入しました。子型犬を飼う家庭も増えてきていましたが、私の妻は肌が弱く、室内で犬や猫を飼うことはないだろうと勝手に思っていました。

ところが、あのときはペットショップを回っていた妻が「この子(犬)だったから買っていいわよ。一番可愛い」と言いだし、娘達も賛成して購入が速攻で決まりました。名前は娘達ではなく、妻が自ら提案し、「アンジュ」とすんなりと決まりました。我が家に新しい家族「アンジュ」がやってきました。

当時私は名古屋から大阪へと勤務地がかわりましたが、単身赴任継続中で、月に3~4回、埼玉の自宅に帰ってくるような生活を2015年春まで続けていたので、アンジュのお世話、散歩などはもっぱら妻が担当してくれました。

ところが、2020年春から始まった新型コロナのパンデミックで、アンジュのお世話役も在宅勤務が多くなった私が主力となり、妻は育児支援のボランティアや実母のサポートに忙しく車で飛び回る生活がはじまりました。

私の在宅勤務も徐々に効率的に会議が設定され、時間の余裕は少なくなりましたが、通勤がなくなった分は朝と夕方も時間ができ、昼休みを含み、毎日沢山アンジュをつれて近所を歩きまわりました。

アンジュをつれてブラブラ歩いていると、妻は彼女の愛車、白い大きな車で家に戻ってきます。散歩中に車を見かけると家に帰る。そんな毎日が続きました。

今日もアンジュの散歩。あの道、曲がり角から家内の愛車が今日も走ってくるのではないかとぼんやりと見てしまいます。アンジュは今年で12歳。まだまだ元気だよ。

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初恋の人

初恋の人はと聞かれれば、小学4年生の時に転校してきたあの子。6年生の途中で島根県に転校してしまったけれど、優等生で美人で垢抜けていて、皆んなあの子に憧れていたはず。あの子のいない中学時代はお陰さまで、野球部の部活と勉強に比較的集中できたのかも。

そして高校生となり、電車通学を開始した私は、年相応に異性を感じたあの子に一年生の後半だったと思いますが、電車の中で出会いました。少し翳りがあり、大人っぽい魅力を感じました。実る事はなかったですが、田舎者の私の思いは募るばかりでした。

そして大学に通い始め、三年生の時に妻に出会うのですが、どちらかといえば、初恋の子に近いタイプかな。いえいえ最も美人で優等生だよ。

こんな話は生前の妻に話をしたことはありませんが、美人で優等生、私にはもったいないパートナーだったよ。そばにいて優しく見守って、しっかり支えてくれて、ありがとう。いまはただただ寂しいよ。

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炊事洗濯家事オヤジ

妻から「今日は何食べたい?」と聞かれるたび、私は何も考えず「生姜焼き、ポテトサラダ、肉じゃが」と毎回同じように答えるのが日課でした。その度に妻は即座に却下して、今晩の献立を自分で考えていました。

そんなやりとりが出来なくなって、料理本を片手に台所で私が作り始めたのは、結局「生姜焼き、ポテトサラダ」そして「肉じゃが」と「豚汁」。最後の「豚汁」は昔学生の頃に作った約40年振りの単純、適当なものでしたが、やはり自分が食べたいものしか作る気になれませんね。

料理本が4人前を想定したレシピだったので、毎回沢山余るのと、同じものが毎週繰り返されるため、最初は褒めて喜んでくれていた娘達もやや飽きてしまいました。

ついつい何事も単調な繰り返しになりがちな私ですが、この1年半で、家の中で出来る事が少しずつ増えてきました。まだまだ駆け出し、家事をやっていますとは言えないレベルですが、オヤジの孤独な修行は続きます。

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死別の悲しみを乗り越える薬

死別の悲しみを乗り越える良い方法は残念ながらないと思います。多くの人は「時間」という薬しかないと言われます。確かにそう、その通りだと思います。私の場合は今のところまだ1年7か月が過ぎたばかり、まだまだ薬は十分ではないかもしれません。

その私からお薦めする本を3冊ご紹介します。

一冊目はアルフォンス・デーケン氏の「心を癒やす言葉の花束」集英社新書。妻の急逝後に何度も何度もこの本を読み返しました。以前購入し、一度さっと読んでしまっていた本ですが、非常に助かりました。

二冊目は重松清氏の「とんび」こちらもテレビドラマも見て、本も過去に読んだ事のあったものですが、どうやって主人公の「ヤス」さんが奥さんの死後に踏ん張っていきたかそのヒントを確認したくて手にとりました。

三冊目はおなじく重松清氏の「その日のまえに」、丁度妻の逝去から3か月目にこの本を手にとりました。何も語れずに天国にいった妻からのメッセージのように思い、電車の中で涙してしまいました。「忘れていいのよ」、そう言われると忘れられません。

 

3冊といっておきながら、もう一冊。辻村深月さんの「ツナグ」、それから映画でみた「月の満ち欠け」、フィクションと理解しながら、いつかまた会える瞬間を待っています。

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父の13回忌

2023年6月17日に父の13回忌を広島で姉と、姉の子供と孫達と賑やかに行いました。梅雨を忘れるような夏空が広がりましした。2011年の6月20日に父は眠るようになくなりました。当時は認知症の母を父が介護する、いわゆる老老介護状態でしたので、父がどのような最後であったかは正確にはわかりませんが、ソファーに座ってなくなったいたそうです。おそらく夜中にトイレに行き、戻ってきて、ソファーに座ってその瞬間を迎えたのだと思います。父の死に始まり、7年後2018年4月21日に母が逝き、その一週間後に白血病を患っていた妻の姉が逝き、翌年の2月に妻の父、義父も他界しました。

そして、父や母等との死別に際して私を支えてくれた最愛の妻が2021年11月2日に天国に旅立ってしまいました。今とても寂しいけど、本当にありがとうね。

来年は母の7回忌を行う予定です。父や母を思い出しながら、妻を身近に感じる時間になりそうです。

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